SW-3B用BPFの制作
- 2023/02/19
- 21:47
以前SW-3Bのスプリアスを測定したところ、結構でていました。→ 過去記事
私の個体だけかもしれないのですが、なんとかしないといけないので、ローパスフィルターを作ろうと思っていたところ突然パワーが出なくなり、中国へ修理に出していたので計画がストップしていました。
2ヶ月かかってようやく帰ってきたので再開することにしました。
あらためてOSA103miniで測定してみました。

7MHz測定。14MHzの第一高調波がガッツリ出ています。

10MHz測定。高調波も出ていますが、下側にも出ていました。

14MHz測定。上も下もガッツリ出ています。
低い方に不要輻射がでているのは以前は気づいていませんでした。
修理から戻ってきたSW-3Bは修理前よりパワーが出るようになっていたんですが、パワーを上げる為に無理させて出ちゃったのかと思いましたが、過去資料をみたらやっぱり出ていました。気づいてないだけでした。
基本波の整数分の1にはなっていないので、いわゆる低調波とは違うのかな?内部の何かが発信して不要輻射をだしているのかもしれません。
一応OSA103miniの問題かもしれないと思い、APB-3やTinySAで測定しても同じように出ていますし、ダミーロードを付けたSW-3BをIC-7300の横に持って行き送信してみたところ、下側のスプリアスが出ているのが聞こえました。
7MHzの低い方はスプリアス基準に収まっていますが、10MHz、14MHzは超えています。
という事でローパスフィルターでは解決しないので、バンドパスフィルターを作ってみる事にしました。
BPFは以前2m用の物を作りましたが、周波数が高いと難しく、結局LPFとHPFを組み合わせてつくりました。
今回はHF帯なのでなんとかなるだろうと計画を進める事にしました。
ちょっと横道にそれますが、
SW-3B等の中華リグのスプリアスはFCC準拠と書かれている物が多いようです。
FCCの規定を調べてみたところ、基本波から-43dBとなっています。
日本のスプリアス規定は5W以下は50μW以下、5Wを超えるものは50mW以下で、且つ基本波-50dBとなっています。
この違いは何なんでしょうね。日本は国土が狭く密集してるからでしょうか?
私の使用方法から言うと、山奥でたかだか5Wの出力で運用していますから、多少スプリアスがでたからと言って誰にも迷惑は掛からないと思うんですよね。
まあ、グチグチ言っても仕方ないですけど。
話を元に戻します。
最初に考えたのは、3バンドとも作ると嵩張ってしまいます。SW-3Bが小さいだけに出来るだけコンパクトに仕上げたい。
7MHz~14MHzまで通過するBPFだと7MHzの高調波が通過してしまうのでダメ。
14MHzは単体で作るとして、7MHzと10MHz共用出来ないか検討。
10MHzの下側のスプリアス(4.5MHz辺り)と、7MHzの第一高調波14MHz以降が消えればいい。
という事でネット上のフィルター設計ツールである程度作りこんでからLTspiceでシュミレーションしてみました。
このLCフィルターの設計ツールはLPF、HPF、BPF等簡単にシュミレーション出来るので便利です。
BPFの場合、使用するLCの数とセンター周波数、通過帯域幅を入力するだけです。
ただ、ここで出てきた結果はあくまで最適値なので、実際に制作できる値に替える必要が有ります。
コンデンサの容量も市販されている物では無いですし、コイルのインダクタンスもそのままでは無理があります。
コンデンサは市販されている物で、できるだけ近い値の物を使った場合にどうなるかLTspiceでシュミレーション。
インダクタンス計算はこちらのツールを使って計算します。希望のインダクタンスを入力すると何回巻かないといけないか出てきますが、5.2回巻きとか端数がでるので実際には無理です。5回巻きが良いのか6回巻きが良いのか再度LTspiceでシュミレーションして確認。

7&10MHzのシュミレーションです。(Chebyshev)
10MHzの下側のスプリアス、4.5MHz辺りで-11dB程ですが、現状ギリギリクリアできていないレベルなので十分だと思います。
7MHzの高調波14MHz辺りは-21dB程なのでこれも問題なさそうです。
各LCの値は以下の通り。

7&10MHzは計画通りで問題ありませんでしたが、14MHzは上手くいかず各部調整して、最終的に右側の実装後変更欄の値にしました。
書き忘れていましたが、コアはT37-6、コンデンサは50Vの積層セラミックです。
次に、実際に必要なコンデンサを購入しますが、コンデンサ精度が±5%なので、結構上振れ、下振れがあります。
一本ずつ測定し、より設定値に近くなるような物をチョイスしますが、ドンピシャにはならないので、上振れした場合と下振れした場合にどうなるか改めて実測値をLTspiceに入力して確認。
上振れは大丈夫だけど下振れはダメとか、その反対とかあるのでイチイチ確認が必要です。
トロイダルコイルの巻き数については実際に測定したところ、ほぼ近似値だったので良しとしました。

各パーツの測定値を入力してシュミレーションした結果(通過帯域のアップ)です。
少々暴れていますが、実際に送信する7MHz、10MHz辺りは-0.2dB ~ -0.3dB程なので大したロスでは無さそうです。
通過帯域外の減衰量も問題なさそうです。
という事で実際に制作にかかります。
先ずはコイル巻からスタート

7&10MHz用です。
最初0.5mmのエナメル線で巻いてみましたが、20T程度が限度だったので、0.4mmで巻きました。

次いで14MHz用のコイル。
こちらはさらに巻き数が増えるので、0.4mmでは全く無理です。
あまりエナメル線が細いとハンダ付けが難しくなるので33Tの物だけ0.29mmで巻きました。

次に生基板に各パーツを置きながら位置決めし、プラスチックカッターでパターンを作ります。
小さく切った基板を貼り付ければランドも簡単にできるのですが、今回は出来るだけコンパクトに作るため、高さに制限があり、基板一枚の高さが無理だったので、コツコツ削りました。

出来上がった基板に実装。

今回はタカチのSW-55に収めました。
結構キツキツでしたけど、なんとか収まりました。

BNCコネクタはネジ部分の短い物を取り寄せました。

さらに芯線部を削ります。

グランドは基板に直接ハンダ付けできるように曲げます。

こんな感じで基板に接触させ、ハンダを流します。

早速測定してみました。
先ずは7&10MHz用です。
ほぼ設計通りの出来上がりです。
通過帯域の7MHz、10MHzの辺りは-0.25dB程度なので、まずまずの出来かな?

14MHzは・・・。(通過帯域の拡大です)
これではダメです。
コイルの巻き方を密にしたり疎にしたり、コンデンサの値を変えてみたり。

なんとか通過帯域がフラットになりましたが、通過帯域の損失が-0.7dB程あります。
あちこち弄ってみましたが、これ以上はどうにもなりませんでしたので一旦調整は終了してスプリアスが消えているか測定してみました。

7MHz

10MHz

14MHz
各バンドとも綺麗さっぱりスプリアスは上も下も消えました。
一旦、これで終了にしようかと思ったのですが、14MHzだけイマイチ納得がいきません。
これまでローパスフィルターを作った際は通過帯域の減衰は-0.2dB程度でした。
以前2mのバンドパスフィルターを作った時は-0.6dBだったので、もう少し何とかなりそうな気がします。
ただ、市販のBPFだともっと酷くて少し前に購入したSOTA BEAMSの2mBPFは-2.6dBと全く話にならない数値でした。
(これだとパワーが約半分になってしまいます)
その辺から考えると-0.7dB程度ならまずまずなのかなと思いましたが、設計を替えれば良くなるかもしれないと思い、もう少し悪あがきをしてみました。
LCフィルターを作る時はいつもChebyshev式で作っているので、今回もChebyshevの計算結果を元につくりましたが、Butterworthで作ってみたらどうだろうと、14MHzだけ追加で作ってみました。

Butterworthの計算値で再度テスト。

あちこち調整して、なんとかいい形になりましたが、やはり通過帯域の減衰は-0.73dBです。
当然Chebyshevと比べるとカット周波数の減衰量は緩やかですし。
パワー測定してみると、先に作った物より若干ダウンしていました。
やはりこれ以上の改善は難しそうです。
私に出来る事はやったので、これ以上は無理と判断。先に作った物で完成とすることにしました。

因みにSW-3Bの出力は12V給電の場合以下の通り

修理前は各バンドとも4W程度しか出ていませんでしたので、BPFを通してもパワーアップしています。

という事で、こんな感じで運用する予定です。
私の個体だけかもしれないのですが、なんとかしないといけないので、ローパスフィルターを作ろうと思っていたところ突然パワーが出なくなり、中国へ修理に出していたので計画がストップしていました。
2ヶ月かかってようやく帰ってきたので再開することにしました。
あらためてOSA103miniで測定してみました。

7MHz測定。14MHzの第一高調波がガッツリ出ています。

10MHz測定。高調波も出ていますが、下側にも出ていました。

14MHz測定。上も下もガッツリ出ています。
低い方に不要輻射がでているのは以前は気づいていませんでした。
修理から戻ってきたSW-3Bは修理前よりパワーが出るようになっていたんですが、パワーを上げる為に無理させて出ちゃったのかと思いましたが、過去資料をみたらやっぱり出ていました。気づいてないだけでした。
基本波の整数分の1にはなっていないので、いわゆる低調波とは違うのかな?内部の何かが発信して不要輻射をだしているのかもしれません。
一応OSA103miniの問題かもしれないと思い、APB-3やTinySAで測定しても同じように出ていますし、ダミーロードを付けたSW-3BをIC-7300の横に持って行き送信してみたところ、下側のスプリアスが出ているのが聞こえました。
7MHzの低い方はスプリアス基準に収まっていますが、10MHz、14MHzは超えています。
という事でローパスフィルターでは解決しないので、バンドパスフィルターを作ってみる事にしました。
BPFは以前2m用の物を作りましたが、周波数が高いと難しく、結局LPFとHPFを組み合わせてつくりました。
今回はHF帯なのでなんとかなるだろうと計画を進める事にしました。
ちょっと横道にそれますが、
SW-3B等の中華リグのスプリアスはFCC準拠と書かれている物が多いようです。
FCCの規定を調べてみたところ、基本波から-43dBとなっています。
日本のスプリアス規定は5W以下は50μW以下、5Wを超えるものは50mW以下で、且つ基本波-50dBとなっています。
この違いは何なんでしょうね。日本は国土が狭く密集してるからでしょうか?
私の使用方法から言うと、山奥でたかだか5Wの出力で運用していますから、多少スプリアスがでたからと言って誰にも迷惑は掛からないと思うんですよね。
まあ、グチグチ言っても仕方ないですけど。
話を元に戻します。
最初に考えたのは、3バンドとも作ると嵩張ってしまいます。SW-3Bが小さいだけに出来るだけコンパクトに仕上げたい。
7MHz~14MHzまで通過するBPFだと7MHzの高調波が通過してしまうのでダメ。
14MHzは単体で作るとして、7MHzと10MHz共用出来ないか検討。
10MHzの下側のスプリアス(4.5MHz辺り)と、7MHzの第一高調波14MHz以降が消えればいい。
という事でネット上のフィルター設計ツールである程度作りこんでからLTspiceでシュミレーションしてみました。
このLCフィルターの設計ツールはLPF、HPF、BPF等簡単にシュミレーション出来るので便利です。
BPFの場合、使用するLCの数とセンター周波数、通過帯域幅を入力するだけです。
ただ、ここで出てきた結果はあくまで最適値なので、実際に制作できる値に替える必要が有ります。
コンデンサの容量も市販されている物では無いですし、コイルのインダクタンスもそのままでは無理があります。
コンデンサは市販されている物で、できるだけ近い値の物を使った場合にどうなるかLTspiceでシュミレーション。
インダクタンス計算はこちらのツールを使って計算します。希望のインダクタンスを入力すると何回巻かないといけないか出てきますが、5.2回巻きとか端数がでるので実際には無理です。5回巻きが良いのか6回巻きが良いのか再度LTspiceでシュミレーションして確認。

7&10MHzのシュミレーションです。(Chebyshev)
10MHzの下側のスプリアス、4.5MHz辺りで-11dB程ですが、現状ギリギリクリアできていないレベルなので十分だと思います。
7MHzの高調波14MHz辺りは-21dB程なのでこれも問題なさそうです。
各LCの値は以下の通り。

7&10MHzは計画通りで問題ありませんでしたが、14MHzは上手くいかず各部調整して、最終的に右側の実装後変更欄の値にしました。
書き忘れていましたが、コアはT37-6、コンデンサは50Vの積層セラミックです。
次に、実際に必要なコンデンサを購入しますが、コンデンサ精度が±5%なので、結構上振れ、下振れがあります。
一本ずつ測定し、より設定値に近くなるような物をチョイスしますが、ドンピシャにはならないので、上振れした場合と下振れした場合にどうなるか改めて実測値をLTspiceに入力して確認。
上振れは大丈夫だけど下振れはダメとか、その反対とかあるのでイチイチ確認が必要です。
トロイダルコイルの巻き数については実際に測定したところ、ほぼ近似値だったので良しとしました。

各パーツの測定値を入力してシュミレーションした結果(通過帯域のアップ)です。
少々暴れていますが、実際に送信する7MHz、10MHz辺りは-0.2dB ~ -0.3dB程なので大したロスでは無さそうです。
通過帯域外の減衰量も問題なさそうです。
という事で実際に制作にかかります。
先ずはコイル巻からスタート

7&10MHz用です。
最初0.5mmのエナメル線で巻いてみましたが、20T程度が限度だったので、0.4mmで巻きました。

次いで14MHz用のコイル。
こちらはさらに巻き数が増えるので、0.4mmでは全く無理です。
あまりエナメル線が細いとハンダ付けが難しくなるので33Tの物だけ0.29mmで巻きました。

次に生基板に各パーツを置きながら位置決めし、プラスチックカッターでパターンを作ります。
小さく切った基板を貼り付ければランドも簡単にできるのですが、今回は出来るだけコンパクトに作るため、高さに制限があり、基板一枚の高さが無理だったので、コツコツ削りました。

出来上がった基板に実装。

今回はタカチのSW-55に収めました。
結構キツキツでしたけど、なんとか収まりました。

BNCコネクタはネジ部分の短い物を取り寄せました。

さらに芯線部を削ります。

グランドは基板に直接ハンダ付けできるように曲げます。

こんな感じで基板に接触させ、ハンダを流します。

早速測定してみました。
先ずは7&10MHz用です。
ほぼ設計通りの出来上がりです。
通過帯域の7MHz、10MHzの辺りは-0.25dB程度なので、まずまずの出来かな?

14MHzは・・・。(通過帯域の拡大です)
これではダメです。
コイルの巻き方を密にしたり疎にしたり、コンデンサの値を変えてみたり。

なんとか通過帯域がフラットになりましたが、通過帯域の損失が-0.7dB程あります。
あちこち弄ってみましたが、これ以上はどうにもなりませんでしたので一旦調整は終了してスプリアスが消えているか測定してみました。

7MHz

10MHz

14MHz
各バンドとも綺麗さっぱりスプリアスは上も下も消えました。
一旦、これで終了にしようかと思ったのですが、14MHzだけイマイチ納得がいきません。
これまでローパスフィルターを作った際は通過帯域の減衰は-0.2dB程度でした。
以前2mのバンドパスフィルターを作った時は-0.6dBだったので、もう少し何とかなりそうな気がします。
ただ、市販のBPFだともっと酷くて少し前に購入したSOTA BEAMSの2mBPFは-2.6dBと全く話にならない数値でした。
(これだとパワーが約半分になってしまいます)
その辺から考えると-0.7dB程度ならまずまずなのかなと思いましたが、設計を替えれば良くなるかもしれないと思い、もう少し悪あがきをしてみました。
LCフィルターを作る時はいつもChebyshev式で作っているので、今回もChebyshevの計算結果を元につくりましたが、Butterworthで作ってみたらどうだろうと、14MHzだけ追加で作ってみました。

Butterworthの計算値で再度テスト。

あちこち調整して、なんとかいい形になりましたが、やはり通過帯域の減衰は-0.73dBです。
当然Chebyshevと比べるとカット周波数の減衰量は緩やかですし。
パワー測定してみると、先に作った物より若干ダウンしていました。
やはりこれ以上の改善は難しそうです。
私に出来る事はやったので、これ以上は無理と判断。先に作った物で完成とすることにしました。

因みにSW-3Bの出力は12V給電の場合以下の通り

修理前は各バンドとも4W程度しか出ていませんでしたので、BPFを通してもパワーアップしています。

という事で、こんな感じで運用する予定です。
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