(tr)uSDX
- 2023/04/30
- 08:47
QRP LabsにQCXというモノバンドのCW専用機が有りますが、5年程前にQSXというオールバンドのCWトランシーバー開発の話しがあり大いに期待していましたが、開発に相当時間がかかり現在ではとんと話が出なくなってしまいました。
QCXはソフトウェアがオープンソースであった事から世界中の無線家が改造して遊んでいましたが、その中でuSDXというSSBにも出られる無線機が出来上がり、かなりの人気があったようです。
ただ、すぐに手に入る安い物は中国の粗悪な製品だったようです。(SSBの音質、スプリアス等)
最近このuSDXをPE1NNZ局とDL2MAN局がさらに改良して(tr)uSDXというキットを販売開始したそうです。
既に中国で粗悪なコピー製品が出回っているそうですが。
当初はあまり興味が無かったのですが、何気なくネットサーフィンしていると(tr)uSDXの日本語の販売サイトがありました。
良く見ると販売しているのはJJ1ILXデイビットさん。
仲良くさせていただいているJP1QECあぶさんのお友達で、私もSOTA運用時に交信したことのある方でした。
中国の粗悪な物ではなく、正規品を扱っておられるようなので一台購入させていただきました。
(tr)uSDXの概要
5バンドSDRトランシーバー(80m,40m,20m,15m,10m)(※1)
モード:CW,SSB,AM,FM (※2)
出力 5W(電源電圧による)
消費電力:受信時80mA
送信時600mA(13.8V時)
※1海外版は80m,60m,40m,30m,20m
※2最新のファームウェア(ベータ版)はAM,FMを無くし、メモリーキーヤーのチャンネル増&スペクトラムスコープ追加
その他の機能
・SWR計、パワー計
・ボイスコンプレッサー
・SSB,CWフィルター
・AGC、アッテネーター
・メモリーキーヤー
・CWデコーダー
・スプリット
・ノイズリダクションフィルター
・本体内蔵マイク&スピーカー

注文したらすぐに送っていただけました。

基板はICやチップ部品は実装済み。
DCコネクタとSMA-BNC変換コネクタが入っていました。
早速制作開始
基本的に組立説明書通りでいいのですが、気になったところだけ書いておきます。

SMAコネクタのハンダ付けは一か所だけハンダ付けした状態でケースと干渉しないか確認した方がいいですね。
ズレると収まりません。
それとケースは3Dプリントですが、プリントアウトしたままで、何の仕上げもされていません。細かな突起が有ったりするので、そのままだと基板が収まらないので、事前にカッターナイフ等で成形した方がいいですね。

スピーカーをはめるリングも電線が上手く収まらなかったので少し削りました。

メインボード完成。

次にコイル巻き。
細かい作業なので指先が痛くなりました。あまり根を詰めない方がよさそう。

RFボードが完成しました。
ここからRFボードのLPFを調整するのですが、メインボードとRFボードをショートさせないように十分注意が必要です。
説明書にはショートさせないように下側のケースを付けることと記載されていますが、私は横着して作業を進めてショートさせてしまいました。モニターが真っ暗になり、困ったなと思っていたらパチンという音とともに異臭がして・・・・
ファイナルが飛んでしまいました。
まずメインボードとRFボードを接続して電源を入れ、調整するバンドにします。
電源を切りメインボードとRFボードを分離する。
説明書に従ってnanoVNAで調整。
この作業を各バンド行うので、ついつい横着してケースを付けずに作業すると私のようになるので要注意です。
結局もう一台購入しました(^^;
デイビットさんは「送ってくれたらチェックして使える部品はそのまま、使えない物だけ販売しましょうか」と言ってくれましたが、壊れた物も基板をじっくり観察して勉強したかったので。

これは7MHzのものですが、基本波の2倍の高調波にノッチを合わせるようにコイルの巻き間隔を調整します。

7MHzに関しては巻きの間隔を目いっぱい広げても希望する周波数にノッチを合わせられなかったので巻き数を1T減らしました。
上の写真は21Mz、28MHzの調整後のコイルです。かなり間隔を狭くしてノッチを合わせられましたが、この状態で一旦取り外してインダクタンスを測定してみたところ、均等に巻いた場合にもう1T増やした値と同じだったので、試しに巻き数を増やしてみましたが、うまく調整できませんでした。
説明書通りの巻き数で良かったみたいです。
次にパワーと電力効率の調整です。
一台目の時は割と簡単に調整出来たのですが、二台目はなかなか規定の効率が出ません。
((tr)uSDXのモニターにパワーと効率を表示する機能があります)
説明書を見ると、基板によってバラつきがあるとの事。
確かに一台目はパワーも外部のパワー計とピッタリ合っていましたが、二台目は若干低く表示されます。
送信時のパワーと電流を測定し、手計算で確認したところ、電力効率は問題無い事がわかりました。
(計算式は説明書に記載あり)
とりあえず出来上がったので、次にスプリアス測定をしてみました。
osa103Mini(スペアナ)で測定してみたところ、かなり上の方でスプリアスが基準を超えていました。

3.5MHzの測定
10MHz辺りで少し出ていますが、これは基準内。120~150MHz辺りで基準を超えています。

7MHzの測定。こちらも147MHzで基準超え

14MHzの測定。140~160MHz辺りで超えています。

21MHzの測定。少し下の105MHz辺りでも出ていました。

28MHzの測定。84MHz辺りで出ています。
何かの間違いかもしれないとTinySAでも測定。

やはり140MHz辺りで出ています。値は多少の違いはあるもののVHF帯でスプリアスが出ているのは間違いなさそうです。
nanoVNAのスパンを広げてフィルターを再度観測。

110MHz辺り(マーカー1)がかなり減衰量が減っています。
他のバンドも測定してみましたが、上の方の周波数になると皆特性が悪くなっていました。

(tr)uSDXの回路図を見てローパスフィルターをLTspiceでシュミレーションしてみました。
本来であればこのように高い周波数もかなり減衰するはずなのです。
何故実際には特性が悪化するのかググってみたら、uSDXのLPF調整を記載しているサイトがありました。
ザックリ言うとC1、C3、C5の共通のグランドラインで発生するインピーダンスが高域の特性を悪化させているそうです。また、C1が高周波成分をC3、C5を介して出力側に流してしまうとも。
C1の接続を変えてやると10dB程改善するとの事です。
この記事は2021年に書かれたものなので、今回購入した(tr)uSDXとは基板パターンも違うかもしれませんが、同じような不具合を抱えている気がします。
ちょっと真似してみようと思いましたが、今回の(tr)uSDXのC1はチップコンデンサを二つ並列にしているのでチョット難しそうです。
スプリアスが出ている周波数はバンドによって違いますが、大体80MHz~160MHzのVHF帯です。
アマチュアバンドも有りますが、その上下業務無線が沢山出ている帯域です。
山の上には業務用無線のアンテナが林立している場所もあるのでこのままではチョットまずいです。
実際のところ0.1mW以下ではありますが、山頂から運用すると結構飛ぶので業務無線に混信するかもしれません。
デイビットさんに連絡したところ、元々FCC基準(基本波-43dB)で作られているようで、デイビットさんも日本のスプリアス基準の事はよく判っておられなかったようです。
デイビットさんは開発元のDL2MAN局に連絡をとったようで、今後日本のスプリアス基準も考慮して開発を進めるとの話と、暫定対策について検討を開始されました。
暫定対策を教えていただいたので、私もやってみましたが、なかなか簡単には行きません。
しばらく時間がかかりそうです。
とりあえず外付けのローパスフィルターを付ける事を検討。
以前MX-P50M用に作ったローパスフィルターを試してみました。

今回スプリアスが出ているのがVHF帯だけなので、28MHz用でOK

これは一番酷かった21MHzの物ですが、他のバンドも含めて綺麗さっぱり消えました。(当たり前ですけど)

ただ、このLPFは50W用でデカいので、28MHz単体のコンパクトな物をまた作りましょうかね。
QCXはソフトウェアがオープンソースであった事から世界中の無線家が改造して遊んでいましたが、その中でuSDXというSSBにも出られる無線機が出来上がり、かなりの人気があったようです。
ただ、すぐに手に入る安い物は中国の粗悪な製品だったようです。(SSBの音質、スプリアス等)
最近このuSDXをPE1NNZ局とDL2MAN局がさらに改良して(tr)uSDXというキットを販売開始したそうです。
既に中国で粗悪なコピー製品が出回っているそうですが。
当初はあまり興味が無かったのですが、何気なくネットサーフィンしていると(tr)uSDXの日本語の販売サイトがありました。
良く見ると販売しているのはJJ1ILXデイビットさん。
仲良くさせていただいているJP1QECあぶさんのお友達で、私もSOTA運用時に交信したことのある方でした。
中国の粗悪な物ではなく、正規品を扱っておられるようなので一台購入させていただきました。
(tr)uSDXの概要
5バンドSDRトランシーバー(80m,40m,20m,15m,10m)(※1)
モード:CW,SSB,AM,FM (※2)
出力 5W(電源電圧による)
消費電力:受信時80mA
送信時600mA(13.8V時)
※1海外版は80m,60m,40m,30m,20m
※2最新のファームウェア(ベータ版)はAM,FMを無くし、メモリーキーヤーのチャンネル増&スペクトラムスコープ追加
その他の機能
・SWR計、パワー計
・ボイスコンプレッサー
・SSB,CWフィルター
・AGC、アッテネーター
・メモリーキーヤー
・CWデコーダー
・スプリット
・ノイズリダクションフィルター
・本体内蔵マイク&スピーカー

注文したらすぐに送っていただけました。

基板はICやチップ部品は実装済み。
DCコネクタとSMA-BNC変換コネクタが入っていました。
早速制作開始
基本的に組立説明書通りでいいのですが、気になったところだけ書いておきます。

SMAコネクタのハンダ付けは一か所だけハンダ付けした状態でケースと干渉しないか確認した方がいいですね。
ズレると収まりません。
それとケースは3Dプリントですが、プリントアウトしたままで、何の仕上げもされていません。細かな突起が有ったりするので、そのままだと基板が収まらないので、事前にカッターナイフ等で成形した方がいいですね。

スピーカーをはめるリングも電線が上手く収まらなかったので少し削りました。

メインボード完成。

次にコイル巻き。
細かい作業なので指先が痛くなりました。あまり根を詰めない方がよさそう。

RFボードが完成しました。
ここからRFボードのLPFを調整するのですが、メインボードとRFボードをショートさせないように十分注意が必要です。
説明書にはショートさせないように下側のケースを付けることと記載されていますが、私は横着して作業を進めてショートさせてしまいました。モニターが真っ暗になり、困ったなと思っていたらパチンという音とともに異臭がして・・・・
ファイナルが飛んでしまいました。
まずメインボードとRFボードを接続して電源を入れ、調整するバンドにします。
電源を切りメインボードとRFボードを分離する。
説明書に従ってnanoVNAで調整。
この作業を各バンド行うので、ついつい横着してケースを付けずに作業すると私のようになるので要注意です。
結局もう一台購入しました(^^;
デイビットさんは「送ってくれたらチェックして使える部品はそのまま、使えない物だけ販売しましょうか」と言ってくれましたが、壊れた物も基板をじっくり観察して勉強したかったので。

これは7MHzのものですが、基本波の2倍の高調波にノッチを合わせるようにコイルの巻き間隔を調整します。

7MHzに関しては巻きの間隔を目いっぱい広げても希望する周波数にノッチを合わせられなかったので巻き数を1T減らしました。
上の写真は21Mz、28MHzの調整後のコイルです。かなり間隔を狭くしてノッチを合わせられましたが、この状態で一旦取り外してインダクタンスを測定してみたところ、均等に巻いた場合にもう1T増やした値と同じだったので、試しに巻き数を増やしてみましたが、うまく調整できませんでした。
説明書通りの巻き数で良かったみたいです。
次にパワーと電力効率の調整です。
一台目の時は割と簡単に調整出来たのですが、二台目はなかなか規定の効率が出ません。
((tr)uSDXのモニターにパワーと効率を表示する機能があります)
説明書を見ると、基板によってバラつきがあるとの事。
確かに一台目はパワーも外部のパワー計とピッタリ合っていましたが、二台目は若干低く表示されます。
送信時のパワーと電流を測定し、手計算で確認したところ、電力効率は問題無い事がわかりました。
(計算式は説明書に記載あり)
とりあえず出来上がったので、次にスプリアス測定をしてみました。
osa103Mini(スペアナ)で測定してみたところ、かなり上の方でスプリアスが基準を超えていました。

3.5MHzの測定
10MHz辺りで少し出ていますが、これは基準内。120~150MHz辺りで基準を超えています。

7MHzの測定。こちらも147MHzで基準超え

14MHzの測定。140~160MHz辺りで超えています。

21MHzの測定。少し下の105MHz辺りでも出ていました。

28MHzの測定。84MHz辺りで出ています。
何かの間違いかもしれないとTinySAでも測定。

やはり140MHz辺りで出ています。値は多少の違いはあるもののVHF帯でスプリアスが出ているのは間違いなさそうです。
nanoVNAのスパンを広げてフィルターを再度観測。

110MHz辺り(マーカー1)がかなり減衰量が減っています。
他のバンドも測定してみましたが、上の方の周波数になると皆特性が悪くなっていました。

(tr)uSDXの回路図を見てローパスフィルターをLTspiceでシュミレーションしてみました。
本来であればこのように高い周波数もかなり減衰するはずなのです。
何故実際には特性が悪化するのかググってみたら、uSDXのLPF調整を記載しているサイトがありました。
ザックリ言うとC1、C3、C5の共通のグランドラインで発生するインピーダンスが高域の特性を悪化させているそうです。また、C1が高周波成分をC3、C5を介して出力側に流してしまうとも。
C1の接続を変えてやると10dB程改善するとの事です。
この記事は2021年に書かれたものなので、今回購入した(tr)uSDXとは基板パターンも違うかもしれませんが、同じような不具合を抱えている気がします。
ちょっと真似してみようと思いましたが、今回の(tr)uSDXのC1はチップコンデンサを二つ並列にしているのでチョット難しそうです。
スプリアスが出ている周波数はバンドによって違いますが、大体80MHz~160MHzのVHF帯です。
アマチュアバンドも有りますが、その上下業務無線が沢山出ている帯域です。
山の上には業務用無線のアンテナが林立している場所もあるのでこのままではチョットまずいです。
実際のところ0.1mW以下ではありますが、山頂から運用すると結構飛ぶので業務無線に混信するかもしれません。
デイビットさんに連絡したところ、元々FCC基準(基本波-43dB)で作られているようで、デイビットさんも日本のスプリアス基準の事はよく判っておられなかったようです。
デイビットさんは開発元のDL2MAN局に連絡をとったようで、今後日本のスプリアス基準も考慮して開発を進めるとの話と、暫定対策について検討を開始されました。
暫定対策を教えていただいたので、私もやってみましたが、なかなか簡単には行きません。
しばらく時間がかかりそうです。
とりあえず外付けのローパスフィルターを付ける事を検討。
以前MX-P50M用に作ったローパスフィルターを試してみました。

今回スプリアスが出ているのがVHF帯だけなので、28MHz用でOK

これは一番酷かった21MHzの物ですが、他のバンドも含めて綺麗さっぱり消えました。(当たり前ですけど)

ただ、このLPFは50W用でデカいので、28MHz単体のコンパクトな物をまた作りましょうかね。
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